第39回人間ネットワーク開催報告【11/18 兵庫】

投稿日時 2018-01-01 | カテゴリ: 【人間ネットワーク】


 第39回大学職員人間ネットワークは、兵庫県西宮市にある「大手前大学さくら夙川キャンパス」を会場として開催されました。「大学のまち・西宮」のテーマのもと、東京から九州にいたる大学から32名の参加者を得て、西宮市産業文化局産業文化総括室大学連携課長の岡崎州祐氏の報告などを通して有意義な時間を共有しました。


■プレ企画「入学前教育の事例報告」

 今回は大手前大学での2度目の開催ということもあり、恒例のキャンパスツアーは行なわず、メイン会場であるCELLフォーラムにて「入学前教育の事例報告」として大手前大学情報メディアセンター課長の西尾信大氏から『大手前大学のeラーニングと新入生キックオフプログラム「el-Campusを使おう」実施を通じて』と題して事例紹介が行われました。
 LMS(el-Campus)導入で、学習行動を分析し教育に活かすことができることや、el-Campusを使って、新入生オリエンテーションを説明会形式から自学自習形式の導入教育「新入生キックオフプログラム」に変えられたことなどの報告が行われました。



■第1部 研修

1.鳥越皓之大手前大学学長歓迎スピーチ
 明星大学岸部亨氏の司会のもと、当会会長の竹山優子氏(筑紫女学園大学)から開会のあいさつが行われました。
 引き続き、基調報告を前に鳥越皓之大手前大学学長から、会場校あいさつに代え「歓迎スピーチ」が行われました。「組織の問題」に対するアプローチとして「嫁盗み」のお話をいただき、旧来からある日本の「村・家制度」の堅持に対する「若者組」の行動になぞらえて、現代の多様な学生に対応するためには、行政からのアプローチや大学の規程に縛られた大学運営に関して、それを打ち破り本質を活かした柔軟な対応ができる職員の必要性、組織としては「制度化された非常手段」の構築が必須であるとのスピーチが行われました。




2.基調報告【岡崎州祐氏「自治体からみた大学連携」】

 鳥越学長の歓迎スピーチ終了後、西宮市産業文化局産業文化総括室大学連携課長の岡崎州祐氏から報告をいただきました。
 西宮市内には私立大学9校を有し、全国でも有数な大学の「まち」であることが、西宮市のまちづくりの指針である「文教住宅都市」づくりのうえでの重要な財産になっているとの説明がありました。この認識に立って、西宮市では市内大学と「包括連携協定」を締結するとともに、2年前に発足した大学連携課を軸に大学政策を組み立て、まちと大学と連携し学生生活の満足度を向上することで「大学のまち」を目指している、とのお話がありました。
そして、これまでの連携からの気づきとして以下のポイントを上げられました。
  (1)大学内社会連携部門の設置(窓口の明確化)
  (2)お互いに無理をしないさせない姿勢
  (3)組織としての対応の重要性
  (4)必要に応じ自治体の当事者を巻き込むことの必要性
 最後に事例紹介があり、「西宮市立こども未来センター」の紹介パンフレットについて、「大手前大学メディア・芸術学部」のマンガ制作専攻のゼミのテーマとして取り組むという、市と大学双方が関わる共同制作のプロジェクトの例が紹介されました。





3.ワークショップ

 基調報告終了後、休憩を挟み4班に分かれワークショップが行われました。ワークショップのテーマは「ある日の事務室」。自治体などから持ち込まれた案件に対してグループワークを行い、若手職員グループは上司に対する業務提案を、管理職グループは部下に対する業務提案を作成します。その後それぞれの立場に分かれ全体会場で意見交換を行うことで、実際の業務運営には何が必要なのかを理解し、今後の参考になればという形で実施されました。
 ・第一班(あかつき班)テーマ
   「市の清掃局がインターンシップとして学生を募集している。本学には寡黙で体力のある学生が比較的多い。」
 ・第二班(あけぼの班)テーマ
   「ある教員が市からの依頼により他大学と共同で地域の調査研究を進めるため、担当する授業の数を減らして欲しいと言ってきた。ただし、当該教員は教育熱心だが、要求が通らないとすぐキレる。」
 ・第三班(ひるなか班)テーマ
   「市内の大学の学長会議で単位互換を促進するため、学生が他大学の授業を履修するよう指導して欲しい旨の要望が市から出された。本学学長は積極的に協力すると発言した。」
 ・第四班(ゆふぐれ班)テーマ(管理職班)
   「カナダの姉妹都市から訪問団を受け入れる際に、通訳や案内役を必要とするため市が学生のボランティアを募集している。本学には英語学科はあるが優秀な学生はみな留学中である。」

 各班でテーマを討議後、若手職員VS管理職というロールプレイ形式で発表が行われ、それぞれが抱える事情や問題点について意見交換が行われました。





 ワークショップの最後に、岡崎課長から以下の講評を頂戴しました。

*岡崎課長講評(要約)*
・大学内部の意思決定の状況が良くわかりました。今後の大学との交渉に活かしていきたいと思います(笑)。
・自治体との連携に関して、お互いのためになる事業であれば前向きに検討していただきたいところなのですが、明らかに市からの無茶振りであるのであれば、遠慮なくお断り になってください。
・行政では法的な思考回路が基礎になっています。法の適用の場面では「法の趣旨」をきちんと押さえることが大切です。さて、自治体が大学に何かの依頼をする場合には、「依頼の趣旨」が必ずあるはずです。「依頼の文面」を見て困惑しても、「依頼の趣旨」を確認することで、うまいやりかたが見つかることもあると思います。
・自治体は予算で動くのですが、予算策定作業は(特に新規事業であれば)前年度の春から始まっています。自治体における予算の裏付けが必要な事業については、かなり早期から調整なり、相談をしておくほうがいいと思います。
・予算関連での一般論なのですが「補助金」というのは、なかなか厳しいと思います。自治体がお金を支出する場合、その効果についても説明できる必要がありますので。そういう意味では、双務的で成果物がはっきりしている委託契約のような形のほうがハードルが低いかもしれませんね。
・自治体が実施する公聴会等に大学生が参加してくださいますと、非常に喜ばれるので是非とも参加して欲しいです。

 最後に、西直美理事長(熊本学園大学)から閉会の挨拶が行われ、研修会を終了しました。



■第2部 情報交換会

 研修会終了後、場所を阪急西宮北口駅前の「ふじや本店」に移し情報交換会が開催されました。
 本会のメイン?行事でもある情報交換会は、石橋靖弘氏(常翔学園)司会進行のもと、奈良原祥子氏(東京農業大学)の乾杯で始まりました。美味しいお酒と料理をいただきながら、本会のメイン行事ならではの本音トークが行われ熱い意見交換の場となりました。また、西宮市の岡崎課長にも引き続きご参加いただき、お互いの「ここだけの話」(笑)をすることができ有意義な時間となりました。恒例の自己紹介も行われ、より親睦を深めることができました。締めとして本会の重鎮井上道晴氏よりあいさつを頂戴し、「人間ネットワーク5本締め」で情報交換会を終了しました。




■オプショナルツアー 福にあやかり、銘酒と銘水の歴史に酔う

 翌日は、地域連携には欠かせない市の歴史の意義を学ぶため、西宮神社と宮水発祥之碑を経由して白鹿記念酒造博物館を見学しました。
 参加者は阪神西宮駅に9:00に集合し、高村麻実氏(大手前大学)の先導のもと、一行は西宮神社へ向かいました。

 西宮神社は、福の神として崇拝されるえびす様をお祀りする神社で、毎年1月10日の本えびすでは、「開門神事、福男選び」が催されることで有名です。一行は、時節柄多くの七五三の参拝者で賑わう本殿で、自身の成長と本会の繁栄を祈念しました。

   


 その後、一行は宮水発祥之碑へ。西宮神社から徒歩で5分ほど南下した幹線道路近辺に厳かな雰囲気を醸す宮水発祥之碑。キレのある灘の酒の源である「宮水(みやみず)」の源泉です。宮水は、一般的な酒造りに使われる水と比べてリン成分が10倍含まれ、一方でにおいの原因になる鉄分が極めて少なく、まさに酒造りにとって理想的な水といわれています。その秘密は、地形が深く関与しており、かつて縄文時代、一帯は入り江の海であったため、海水と北部の六甲山水が混ざり、絶妙の水の浸透圧が生まれたことにあります。現在は地上に湧き出ていませんが、地下に脈々と流れる宮水。その独自の地形がつくり出す自然の奇跡の一端に触れ、“酔いしれた”一行でした。

   


 ツアーも終盤にさしかかり、一行は白鹿記念酒造博物館を見学しました。
お酒に関する文献や美術工芸品が展示された「記念館」や、明治期の木造蔵を再現した「酒蔵舘」に赴き、酒造りに懸けた先人の想いを十分堪能した後、同館に隣接する昼食会場「白鹿クラシックス」で、灘の銘酒のキレを味わいつつ、身も心も酔いしれた一行。歴史探索をきっかけに、「福」、「自然」、「先人の想い」、そして会員相互の「絆」の“繋がり”を深めた意義深いツアーとなりました。

   



≪おわりに≫
 今大会は地域と大学との連携をテーマに大手前大学との共催、西宮市の後援で実施しました。本会のモットーである「大学を超えた繋がり」の進化形は、たくさんの方々にご協力いただき盛会となりました。心より感謝申し上げます。
 次回の来年度前期大会は、中国地区において実施します。またより多くの方々とのつながりを心待ちにしております。




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